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ヨーロッパ陶名品特集

【第7回 セーブル - Sevres】

別名「幻の陶磁器」。
国窯であるセーブルは現在でもエリゼ宮や国賓へのギフトなどフランス国家のための制作が中心です。
生産量は年間わずか6000ピース前後。そのうちカップ&ソーサーやプレートなどのサービスウェアにいたっては2000~3000ピースという少量生産。一年間カップ&ソーサーだけを制作したとしても一日当たりの生産量は三客にも満たないということになります。
しかも国窯のためほとんどがフランス国家のために使われます。

職人の数はあらゆる工程の全職人を合わせても約100人。ヘレンドがペインターだけで600人ですからいかに職人が少数精鋭であるかがわかります。

セーブルの使命は「品質を落とさないこと」に尽きます。
コスト管理よりも最高の作品を作り出すことが最優先される国家事業であることは職人にとってひじょうに恵まれた環境でもあります。

ポンパドール貴婦人のバックアップで1750年に王家ご用達ヴァンサンヌ窯が「王立製陶所」となり、1759年にヴェルサイユ近郊のセーブルへ移転し、「フランス王立セーブル製陶所」となりました。

以来、「王者の青」「クラウテッドブルー」「アガサブルー」などの深遠な色使いに繊細かつ華麗な金彩装飾を施した名品を生み出し続けています。

その希少性は、一般顧客への流通ルートが閉ざされていることでますます高まり、冒頭の「幻の陶磁器」たるゆえんとなっています。世界中で日本にのみ代理店が存在しますが日本代理店用に制作する意図はありませんので事実上は一般入手の道は閉ざされています。
日本に世界で初めて代理店が認められた際のカタログと価格表だけが残っている状況です。

セーブルの色

セーブルではローズポンパドール(ポンパドールピンク)など数千種類の絵の具が開発されていますが、やはりセーブルを代表するカラーといえばブルーに集約されます。

■クラウデッドブルー
有名な雲状ぼかしのコバルトブルーでセーブルでもっとも古いブルーの技法です。
フランス語表現でブルーニュアージュとも呼ばれ、洋食器のSohbiでもブルーニュアージュが通称となっています。
コバルトを彩色・焼成したあとにさらにコベルト絵の具を彩色し、こすり職人・たたき職人がその絵の具を焼成前にこすり取ることであの深遠なぼかしを表現します。
ぼかし表現を変えることでブルーラピスラズリという地色も創作されます。

■ファットブルー
コバルト焼成を三回繰り返すことで深みのある均一なコバルト地を作り出すファットブルー。
いわゆる「王者の青」と称される他の追随を許すことの無いまさしく濃紺色です。

■アガサブルー
水色というには安直すぎ。ターコイズというには軽すぎる独特の色合い。特徴的なのはわずかな斑(むら)文様による深みはセーブルをもってしてもなかなか表現できない色となっています。もっとも繊細な技術が必要とされるためひじょうに高価です。

いずれも焼成温度や時間、窯での配置により微妙な影響があり完全に同じようには発色できません。そのためサービスセット(写真:左)などは必ず同時に焼成されます。
少量生産だからこそできるこだわりです。

セーブルの金彩

繊細なセーブルの金彩装飾はいったいどのようにして施されているのでしょうか。

■金彩の種類と呼称
セーブルには千種類に及ぶ金彩文様があり、それぞれの文様は番号で管理されています。
転写紙が厳格に管理されているわけです。
そしてプレートのリムやカップとソーサーの縁取りに使われる金彩はフレーズ(フリーズ)と呼ばれます。
プレートやふたもののふたの中心に用いられるメダイヨン状の金彩はロザースといいます。
フリーズ○○番、ロザース○○番という具合に呼ばれます。

■金彩工程の概略
さきほどの説明でさすがのセーブルも金彩は転写シールなのかとお思いになったでしょう?
時代ごとの千種類近い文様はそうしなければ管理できません。雲散霧消してしまいます。
ただここからがセーブルのすごいところです。
24金を転写紙で写し込んだあとに金彩専属ペインターが金粉絵の具でさらに上塗りを施します。
そして焼成されてめのう職人が磨き上げます。
このコストを度外視した工程があってこそあの贅沢でリッチな金彩装飾が完成します。

セーブルのシェイプ

ここですべてをご説明することはできませんが、セーブルのサービスシェイプの代表をご紹介いたしましょう。

■リトロン
ポットの容量が1リッターだったことから命名された筒型のシェイプ。この筒型のカップを最初に発表したのはセーブルであることはあまり知られていません。
1700年代の伝統的なシェイプです。

■オボイード
その名の通りカップが卵型の美しい曲面のフォルムをもつシェイプです。すっきりしたボールに複雑な形状のハンドルが組み合わされたユニークなデザインです。1820年頃のデザイン。

■ペイール
リングのようなハンドルは竹、樹木を表現していてこれは日本や中国への影響または尊敬が込められています。シャープなカップのフォルムにシンプルなハンドルが小粋なフランスのセンスが感じられるシェイプです。ちなみにペイールはこの形のデザイナーの名前です。1845年デザイン。

■カラーブル
ハンドルが人の耳のような形のカラーブルは全体的にひじょうにやわらかいイメージで飽きがこないデザインです。ルイ15世統治下の1700年代半ばにデザインされました。

■ディメール
優雅なハイハンドルが美しいディメールはティーサービスがお似合いです。同じくハイハンドルのアンピール様式のクップというシェイプもありますがこちらはペイール、オボイードをデザインしたコンスタン・ペイールの手によるものです。

このようにサービスウェアは時代ごとのシェイプがしっかりと受け継がれていることもセーブルの特徴です。面白いのはプレート類はユニ(写真:左)、クープ系はクープル(写真:右)という独立したシェイプがあって共通で上述のサービスシェイプに組み合わされるという点です。
もちろんフラワーベースやコンポートなどそれぞれに命名されたシェイプがあります。

セーブルの磁士

セーブルには大きく分けて硬質磁器が完成される以前のソフトペーストといわゆる硬質磁器のハードペーストが使い分けられています(実際にはあとヌーベルペーストとパートアントワーヌの4種類)。
ビスキュイ人形(写真:左)や復刻品(写真:右)に用いられることの多いソフトペーストは今では焼成がひじょうに難しく高価です。


長々とご説明いたしましたがまだまだ尽きることはありません。
今回最後にご説明したいことはセーブルその一点について。
このために今までのご案内があったともいえます。

こうして完成した作品の呼び名です。
基本的に上記の各仕様を羅列することで確定する点がまたセーブルの特徴です。
極端にいえば作者やスペックがあっても作品の個別の名前がないのです。

たとえば、
形:オボイードのコーヒーカップ&ソーサー80cc
色:ブルーニュアージュ
金:フリーズ112にさらにフラワークラシック(小花の金彩模様)
ですからあえてこのコーヒーカップは?とお尋ねがあれば、
フラワークラシック付フリーズ112番のブルーニュアージュ・コーヒーカップ&ソーサー・オボイードとお答えするしかありません。
さらに白磁が焼成された年度と絵付けされた年度も正確にわかるようになっています。

同じものというのはほとんど不可能なのです。

いかがですか?
フランス国立セーブル磁器製陶所の特殊性が少しでもお伝えできましたでしょうか。
まだまだ白磁焼成年度と絵付け年度が平気で数十年離れていたり(全部わかります)、ビスキュイと呼ばれるセーブルの磁器人形、焚き火窯による作品などご紹介したいことは山ほどあります。 またいずれ続編を。

【作品のご紹介】

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